2026.02.10

社員の不満の「正体」を解剖する。なぜ貴社の評価制度は「空回り」し続けるのか

社員の不満の「正体」を解剖する。なぜ貴社の評価制度は「空回り」し続けるのか

「うちの評価制度、社員はどう思っている?」

経営者が側近にそう尋ねたとき、返ってくる「概ね、好評です」という答えほど、組織を蝕む毒はありません。

多くの場合、社員は「納得」などしていません。ただ「諦めて」いるだけなのです。どれほど立派な評価シートを作り、MBOやOKRといった横文字の最新手法を取り入れたとしても、離職者が減らず、組織に活気が戻らない。その理由は、制度の形が古いからではなく、経営者と社員の間に横たわる「認識のズレ」を放置したまま、上辺だけを整えているからです。

一般に、評価への不満は「給与が低いこと」だと思われがちです。しかし、組織再構築の現場で私が目にする真実は違います。不満の本質は、額面の低さではなく、「自分の貢献と、会社からの評価の間に横たわる、説明のつかない不誠実な距離」です。

社員は、自分が「何を期待され、何を達成し、それがどう会社の未来に繋がったのか」を、腹落ちする言葉で語られたい。その一貫性が途切れたとき、社員の心には「この会社は自分を見ていない」という静かな絶望が宿ります。

視点のズレが、組織の歪み(不満)を形作る

このズレを解明するには、私が提唱する「取締役・経理・営業」の三視点での診断が不可欠です。

  1. 取締役視点(理想のズレ): 経営者は「次世代のリーダーになってほしい」と願っているが、評価項目は「今期の売上」にしか触れていない。
  2. 経理視点(原資のズレ): 現場が「これだけ頑張った」と主張しても、経理側から見れば「利益率を圧迫するコスト」としてしか評価できない原資の壁。
  3. 営業視点(現場のズレ): 「数字は達成した」が、その過程で組織文化を破壊している社員が、数字だけで高評価を得てしまう矛盾。

これら三つの視点が統合されていない制度は、正義がどこにあるのか分からず、真面目な人間ほど報われない構造が出来上がってしまいます。

ここで、経営者の皆様に自問していただきたい「診断項目」があります。

  1. 評価面談で、社員から「具体的に何をすれば次のグレードに上がれるのか?」と聞かれ、即答できるか。
  2. 会社が最も大切にしている「理念」を体現している社員が、社内で最高評価を得ているか。
  3. 利益が出たとき、その配分ルールが社員に「透明性」を持って開示されているか。
  4. 評価の結果、給与が上がった社員が、翌月から「さらに挑戦しよう」という顔をしているか。
  5. 社長であるあなた自身が、今の評価制度で「自分を正当に評価できる」と断言できるか。

一つでも「No」があるなら、貴社の評価制度はすでに、社員の足を引っ張る「重り」と化しています。

評価制度を刷新するということは、エクセルのシートを書き換えることではありません。経営者の想い(理念)、会社の体力(経理)、そして現場の汗(営業)を、一本の線で繋ぎ直す作業です。

社員が抱いているのは「不満」ではありません。経営に対する「問い」です。その問いに正面から向き合う勇気を持ったとき、組織は初めて自走を始めます。

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