2026.05.26
「なぜ、うちの会社には『ブランド』がないと感じるのか ― ブランドの棚卸しから始める理由」
「うちには誇れるブランドなんてものはありませんよ。」サポートしていてよく言われるフレーズの一つです。「取り立てて技術力が高い訳でもありませんし、競合他社を圧倒する特徴が何かある訳でもありませんし、そこらへんによくある何の変哲もない普通の会社の一つですよ。」と。
本当にそうでしょうかと毎回思います。創業が60年を余裕で超えている、従業員も50人を超えている。よく言われるように従業員の後ろには家族がいて、親兄弟、友人知人も合わせると少なくとも50人×3や4では済まない人数の人々に影響を与えている訳です。会社を経営していくという事は、商品やサービスを通じて顧客、地域社会、引いては日本、海外へと社会貢献活動の一つの訳ですから。素晴らしい事なんですけれどもと返しても「そうですかね。」という返答が返ってくるパターンが多いです。
ブランドとは、「作るものというよりも、棚卸するもの。既に会社の中に宿っているものを掘り起こして顧客との共同作業の一環として生まれるもの、育てていくもの」と考えます。
ブランドをこう見てはいないでしょうか。以下に3つを例示します。改善のきっかけにして頂けると幸いです。
⓵ ブランドを「外側」に作ろうとする
多くの経営者は、ブランドを外側と捉えてお化粧をするが如く、外面のみの表面を変えようとします。会社のキャッチコピー、ロゴ、SNS発信、認定資格取得等々。しかし、内側つまり会社としてあれこれの理由や考えがあってのものが整っていないと表面だけの言葉や上滑りの行動になり、何のためというのが抜け落ち、何のためにやっているのか?と自問することに早晩つながります。
⓶ ブランドは「日々の積み重ねの【当たり前】の中に埋没している」
長年やってきた事業としての拘りは、言葉にしようとも思いませんし、当たり前過ぎて疑問が湧くということにはならないですよね。だから自社では見えない、見えていない。何かを習得する際には、最初はコツやポイントが分からないので、注意深くノートを取ったり、メモでまとめてみたりします。自分なりの視点を入れて注意点や順番やタイミングを見極めていき、何度かトライアンドエラーを繰り返すと特に深く考えることもなく、習慣として身に付き、疑問が湧くことも少なくなっていきます。こうして習慣化したものは、特に焦点も当たることなく、埋没していきます。
⓷ 棚卸をしないまま戦略を立てると方向がズレる
戦略もないまま、単に世間で流行っているから、ライバル企業が導入しているから、業界の常識だから、経営環境が変わったからという理由で外側だけ整えても内側が整っていないとやがて瓦解する。基礎がしっかりしていない建築物は、大地震でもろくも崩れ去る。これと一緒です。外側だけを華美にそれっぽく作っても中身がスカスカだと飽きるのも早いという事です。組織に長期間に渡って根付かない、定着しない、忘れ去られる。また、外側を整えるのは、厄介な面もあります。一見目に見えて分かりやすいので、完成物を見るとやった気になる、短期の満足度が高い、瞬間の組織活性化にはつながるという点です。しかし、中長期視点でみると大概外側を整えるのに使ったコスト、リソースが結局はムダであったと後で振り返るとよく理解出来ます。その時は分からなくとも。どうしてあの時、会社のキャッチコピーをあれにしてしまったのだろう?と。
自社の棚卸をする中で実際のブランドが浮かび上がった瞬間をお話ししていきますので、追体験をして頂きたいと思います。
とある教育コンテンツの制作会社での出来事です。デジタルコンテンツが隆盛を極めている昨今ですが、学習をする際には紙媒体での学習ニーズもまだまだございます。その会社では、出来上がったコンテンツを年に数回に分けて納品していました。「年間の全コンテンツは何冊くらいに相当しますか?」と聞いてみました。「そうですね。ざっくり30万冊は優に超えているかと。」30万冊?他人から見ると膨大な冊数です。でも自社から見ると受注して納品をしているので、特に疑問を持たずに制作に励む訳ですよね。
また、別の角度からも聞いてみました。「今までの冊数やコンテンツ制作物を積み上げると何メートルくらいになりますか?」と。聞かれた経営者は、目が点に。積み上げるという事を考えたこともないし、ニーズに応えようとコンテンツの質を上げて学習者がより理解が促進するように中身の内容にブラッシュアップをかける。日々の愚直な積み重ねが今日まで続いてきたにすぎない訳ですから、積み上げてみるという発想には至らなかったのです。
門外漢の私からするとシンプルにすごい量なので、積み上げたらどこまで積み上がるのだとうかと単純に考えました。結果として富士山の高さ3,375.6mを余裕で超えていました。聞かれた経営者もびっくり。それだけ多くの学習者に影響を与えています。今の順調に積み上げの高さを順調に更新していっています。そう、自社は学習コンテンツを制作していると思っていても学習する立場からすると日々の学習に大いに寄与している。
ブランドが誕生して表に現れた瞬間です。もうお分かりですよね?ブランドは、既にある。焦点をどこに当てるかという視点です。自分では中々気づかない、気づけないという事例でした。「当たり前」は、自社には見えないという点です。
ここで、経営者の皆様に簡単なミニワークを実施して頂きたいです。
パソコンではなく、手書きのノートで行って頂く事をおススメします。思考と定着が直接リンクするアナログの方が書くには持ってこいです。パソコンだと書くという脳への刺激が書くという行為より圧倒的に劣りますので。

ワーク1
・「なぜ、この業務(会社として、経営者としての)をしているのか」を従業員へ説明出来る言葉で一文書く
ワーク2
・「経営者として何を妥協しないのか、妥協したくないのか」を一文で書く
ワーク3
・「自社の商品やサービスを選んだ顧客の何が変わったのか」を一文で書く
【今回のまとめ】
自社のブランドの棚卸は、戦略よりも先。外側ではなく、内側(自社内)を掘り起こすことから始まる。外側ではなく、内側から。順番が大切。
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