2026.07.14

「判断基準は伝えた」のに、なぜ幹部の判断はズレるのか ― 3つの理由

「判断基準は伝えた」のに、なぜ幹部の判断はズレるのか ― 3つの理由

判断基準がズレる会社の多くは、社長が「伝えていない」からではありません。「伝え方が、具体的な場面まで届いていない」ことが原因です。

「顧客対応は、スピードを最優先にしてほしい」。社長はそう伝えてきたつもりでした。しかし、ある日、幹部の対応を見て、まったく違う基準で判断していることに気づきます。

判断基準がズレる3つの理由と、今日からできる伝え方の変え方を、一緒に見ていきます。

幹部の判断がズレるのは、幹部の理解力の問題ではありません。社長から渡された判断基準が、抽象的な言葉のまま止まっていて、具体的な現場の場面でどう使うかまで伝わっていないからです。

伝え方が抽象的であるほど、受け取る側の解釈の幅は大きくなります。同じ「スピード」という言葉でも、社長が思い描くスピードと、幹部が現場で実行するスピードは、少しずつ違うものになっていきます。

理由1 判断基準が、抽象的な言葉のままになっている

「顧客第一」「スピード重視」という言葉は、多くの会社で共有されています。

しかし、実際の現場で、その言葉をどう使えばいいのかまでは、示されていないことがほとんどです。基準を伝えたつもりでも、一方的な言葉の伝達で終わってしまっているのです。

抽象的な言葉は、受け取る人によって解釈が変わります。

たとえば、顧客からのクレーム対応の場面を考えてみてください。

「スピード重視」を「早くクレーム処理を終わらせること」と捉える人もいれば、「初期対応だけ早く済ませ、そのあとは時間をかけて顧客に向き合うこと」と捉える人もいます。どちらも「スピード重視」のつもりですが、実際の行動はまったく違います。

あなたの会社の判断基準は、具体的な場面とセットで説明されているでしょうか。

理由2 例外の場面で、判断基準が確認されていない

判断基準は、日常のパターン化された場面では、たいてい問題なく機能します。

しかし、突発的なクレームや、初めて受ける依頼のような例外の場面では、基準の解釈が人によってバラつきます。

例外の場面が起きるたびに、「このときはどう考える?」と確認する機会がなければ、判断基準は少しずつ、現場ごとに使いやすい基準へと置き換わっていきます。同じような場面でも、対応する人によって結果が変わってしまい、基準としての一貫性が失われていくのです。

最近あった例外的な判断の場面を、幹部と一緒に振り返ったことはありますか。

理由3 結果だけを見て、途中の考えを聞いていない

判断の結果だけを見て、「それでいい」「それは違う」と社長が評価してしまうと、幹部は「結果さえ合っていれば、それでいい」と学んでしまいます。

判断の途中経過、つまり「何を優先したのか」「なぜその判断に至ったのか」を聞かれない限り、幹部は自分の基準がズレていることに気づけません。たまたま結果が合っていただけでも、「これで合っている」と思い込んだまま、その場しのぎの判断を繰り返すようになります。

最近の判断について、幹部に「なぜ、そう判断したのか」を聞いたのは、いつ頃でしょうか。

社長が思っている判断基準/幹部が使っている判断基準

項目社長が考える判断基準幹部が実際につかう判断基準
言葉の状態抽象的なフレーズとして記憶具体的な場面での解釈として運用
例外場面での扱い基準通りに判断されていると思っているその場の空気や過去の経験で判断
評価の仕方結果だけを見て良し悪しを判断結果に合わせて判断基準を後付けで解釈
半年後の状態基準は浸透していると思っている現場ごとに異なる基準で運用されている

今日からできる3つのこと

行動1 判断基準を、1つの具体的な場面に言い換えてみる

「スピード重視」を、「顧客からのクレームは、内容に関わらず24時間以内に一次回答する」のように、1つの場面に絞って言い換えてみてください。抽象的な言葉のままにせず、誰が読んでも同じ行動を思い浮かべられる形にすることが大切です。

行動2 直近の例外的な判断を、幹部に振り返ってもらう

「あのときは、どう考えた?」と、直近にあった例外的な判断を1つ選んで、幹部に聞いてみてください。答え合わせではなく、一緒に振り返る時間として使うと、基準のズレが自然と見えてきます。

行動3 結果ではなく、判断に至った途中の考えを聞く

「なぜそう判断したのか」ではなく、「そのとき、あなたはどう考えたのか」と聞いてみてください。責めるための質問ではなく、プロセスを一緒に確認するための質問にすることがポイントです。

ミニワーク ― 書き出すだけでいい

問い1 あなたが幹部に伝えている判断基準を、1つだけ書き出してください。

問い2 その判断基準を、直近のどんな場面で使いましたか。できるだけ具体的に書いてください。

問い3 もしその場面について幹部に聞いたら、あなたと同じ答えが返ってくると思いますか。

3つとも、難しく考える必要はありません。思い浮かんだことを、そのまま書き出してみてください。書き出してみるだけで、自分が思っていた基準と、実際に使われている基準の距離感が見えてきます。

まとめ ― 判断基準は、繰り返し語り直すことでズレが埋まる

判断基準がズレるのは、幹部の理解力の問題ではありません。抽象的な言葉のまま渡され、例外の場面で確認されず、結果だけで評価されてきたことの積み重ねです。

判断基準を、具体的な場面に置き換えながら、社長と幹部とで繰り返し語り直していく。それだけで、ズレは少しずつ埋まっていきます。一度で完璧に伝わる基準はありません。伝え直すたびに、基準は現場に馴染んでいきます。

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