2026.08.18

「何となく、うちに合わない」 ― 採用基準が、社長の頭の中だけで止まっている理由

「何となく、うちに合わない」 ― 採用基準が、社長の頭の中だけで止まっている理由

採用基準は、多くの会社で、社長の感覚に頼ったままになっています。

だから、面接のたびに採用担当者が「どう判断すればいいのか」と迷うことになります。

面接のあと、採用担当者が社長にこう聞きます。「先ほどの応募者の方、どう思いますか。」

社長は、「何となく、うちには合わなさそうだったよね。」とだけ答えます。この「何となく」は、多くの会社で繰り返される場面です。

採用基準が言葉になっていない原因の構造と、採用基準を明文化しようとしても上手くいかない理由、そして今日からできる改善の方向性を、できるだけ具体的に説明していきます。

基準がないのではなく、言葉にする機会がなかっただけ

採用基準が言葉にならないのは、社長の判断力が低いからではありません。

経験の積み重ねからできあがった基準を、まだ言葉にする機会がなかっただけです。

原因の構造 ― 暗黙のルールには2種類ある

現場定着型

「クレームは、すぐに謝罪の連絡をする」のように、現場で自然に定着した習慣です。関わる人が多いので、いずれ誰かが気づき、言葉にされやすいという特徴があります。

新入社員が入社するたびに誰かが説明する場面があり、そのやり取りの中で自然と言葉になっていきます。

社長完結型

採用基準は、こちらのタイプです。社長は、応募者を見て「何となく、うちには合わない」と感じます。その感覚は、これまでの採用や社員との関わりの中で積み重なってきたものです。

ただ、その積み重ねは、社長の中にしかありません。現場定着型と違い、社長以外の人がその場に居合わせる機会がほとんどないため、誰かが気づいて言葉にする、ということが起こりにくいのです。

あなたの会社の採用基準は、社長以外の人にも説明できる形になっているでしょうか。

採用基準を明文化しようとしても、上手くいかない理由

多くの会社では、採用基準を明文化しようとして、「採用基準表」をつくります。「コミュニケーション能力」「主体性」といった項目を並べた表です。

こうした項目は、誰にでも当てはまる言葉になりがちです。

「コミュニケーション能力が高い人」という基準だけでは、実際の面接で誰を選べばいいのか、判断が難しいままです。2人の応募者が両方とも「コミュニケーション能力が高い」ように見えたとき、この表は何の助けにもなりません。

表は、社長が過去に「良い」と感じた具体的な人物像を書き出さずに作成されることが多く、社長自身の「何となく」を、言葉に置き換えられていません。

この「何となく」を具体的な場面に置き換える作業を省略したまま表だけを作っても、結局は元の「何となく」に頼ることになります。

改善の方向性 ― 3つのステップ

ステップ1

過去に採用してよかった人を、1人思い出す

「うちに合っていた」と感じた社員を、1人思い浮かべてください。

ステップ2

その人の、具体的な場面を1つ書き出す

なぜ「うちに合っている」と感じたのか、実際にあった場面を1つ、文章にしてください。抽象的な言葉ではなく、具体的なエピソードで構いません。

ステップ3

その場面を、次の面接で採用担当者と共有する

「こういう場面で、こう感じた人が、うちに合っていた」と、採用担当者に伝えてみてください。1人分の共有からで十分です。

社長の頭の中だけで止まっている会社 VS 言葉にして共有している会社

項目社長の頭の中だけで止まっている会社言葉にして共有している会社
採用の判断社長の「何となく」に頼る具体的場面を基に判断できる
採用担当者の状態毎回、社長に確認する自分でも一次判断が出来る
採用基準表抽象的な言葉が並ぶだけ具体的なエピソードが基準になる
半年後同じ迷いが繰り返される採用担当者の判断が、少しずつ社長に近づいていく

この表からも分かるように、社長の頭の中にある判断基準を、言葉にして見えるようにするかどうかで、半年後、採用担当者がどこまで自分で判断できるようになっているかが変わってきます。

ミニワーク ― 書き出す

問い1 「うちに合っていた」と感じた社員を、1人思い出してください。

問い2 なぜ、そう感じたのか、具体的な場面を1つ書き出してください。

問い3 その場面を、次に誰に共有しますか。3つとも、難しく考える必要はありません。思い浮かんだことを、そのまま書き出してみるだけで十分です。

まとめ ― 「何となく」は、書き出せば基準になる

採用基準が言葉にならないのは、社長の中に基準がないからではありません。積み重ねてきた「何となく」を、具体的な場面として書き出し、共有していないだけです。

強い会社(社長がいなくても、社員が自ら判断して動ける会社)は、この「何となく」を、1つずつ言葉に変えています。今日、1人分だけでも、書き出してみてください。

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