2026.09.01

採用しても定着しない本当の理由 ― 原因は採用ではなく、育成の道筋だった

採用しても定着しない本当の理由 ― 原因は採用ではなく、育成の道筋だった

新入社員が定着しないのは、採用のミスマッチではありません。入社後、何を目指せばいいのか、誰も教えていないだけです。

ある会社で、採用した新入社員が、入社半年以内に次々と辞めていくのを食い止めたい、という相談を受けました。

社長は、「採用の仕方に問題があるのでは?」と悩んでいました。実際に話を聞いてみると、採用のやり方自体に大きな問題は見当たりませんでした。この会社には、自分の意思を持った応募者が、これまでも数多く集まっていたからです。

社員が定着しない本当の原因と、今日からできる改善の方向性を、できるだけ具体的に説明していきます。

原因は採用ではなく、育成の道筋がないこと

社員が定着しない本当の理由は、採用のミスマッチではなく、入社後の育成の道筋が言葉になっていないことです。

なぜ、入社後の道筋が大事なのか

新入社員は、期待に応えたいという気持ちを持って入社してきます。この会社でも、新入社員はまず営業部に配属され、1ヶ月間、朝から晩まで顧客へのアポ取りだけを続けていました。

しかし、「入社3ヶ月で、何ができるようになればいいのか」が言葉になっていなければ、何を目指して努力すればいいのか分かりません。

新入社員は、誰からも何も教わることなく、ゴールの分からないまま、我流でアポ取りを続けていました。

上司によって言うことが違えば、本人は尚更混乱します。

ある先輩は「まず件数をこなせ」と言い、別の先輩は「1件1件を丁寧に」と言う。どちらも間違いではありませんが、新入社員からすれば、何を優先すればいいのか分からなくなります。分からないまま日々の仕事をこなし続けることに疲れて、辞めていく人は少なくありません。

あなたの会社では、入社3ヶ月、半年、1年で、それぞれ何ができるようになって欲しいか、言葉になっているでしょうか。

よくある対策が効かない理由

多くの会社は、「もっと人財の見極めを厳しくしよう」と、採用基準を厳しくします。

どれだけ見極めを厳しくしても、入社後の道筋が言葉になっていなければ、同じ問題が繰り返されます。

良い人を採用できても、「何を目指せばいいのか分からない」状態は変わらないからです。優秀な人ほど、目指すべきゴールが見えないことに、早い段階で焦りを感じてしまうこともあります。

研修を増やしても、「今月学ぶこと」を教えるだけで終わりがちです。「半年後、何ができるようになっているべきか」というゴールが示されなければ、研修は一つひとつがバラバラな知識のままで終わってしまいます。

改善の方向性 ― 3つのステップ

ステップ1 直近で辞めた人を、1人思い出す

その人が、入社してからどれくらいで辞めたかを、思い出してください。

ステップ2 その時期に、何ができるべきだったかを、1文で書き出す

「入社3ヶ月で、ここまでできるようになって欲しい」ということを、1つの短い文にしてください。

営業職であれば「1人で商談のアポイントが取れる」、接客業であれば「1人でレジ対応ができる」というように、具体的な行動で書くと伝わりやすくなります。

ステップ3 次に入社する人に、最初の面談で伝える

書き出した内容を、入社後できるだけ早い段階で、本人に伝えてください。入社初日の面談で伝えられると、なお良いです。口頭だけでなく、簡単なメモとして渡しておくと、あとから本人が読み返すこともできます。

道筋がない会社/道筋がある会社

 道筋がない会社道筋がある会社
新入社員の状態目指す方向が分からないまま働くいつまでに何ができればいいのかが分かっている
上司の関わり方人によって言うことが異なる同じ基準で育成できる
半年後同じように離職が続く定着率が上がっていく

この表からも分かるように、新入社員が定着するかどうかは、採用した人の資質よりも、入社後にゴールを示せているかどうかで、大きく変わってきます。

ミニワーク

問い1 直近で辞めた人を、1人思い出してください。

問い2 その人に、入社3ヶ月の時点で、何ができるようになって欲しかったか、1文で書き出してみてください。

問い3 その1文を、次に入社する人に、いつ伝えますか。

3つとも、難しく考える必要はありません。思い浮かんだことを、そのまま書き出してみるだけで十分です。

まとめ ― 定着しないのは、採用のせいではない

採用しても定着しないのは、採用のやり方が悪いからではありません。入社後、何を目指せばいいのかが、言葉になっていないだけです。

冒頭の会社も、新入社員に「1ヶ月で、まず1件アポイントを獲得する」という具体的なゴールを伝えるようにしたところ、半年以内の離職が少しずつ減っていきました。特別な採用手法を変えたわけではありません。伝える言葉を、1つ増やしただけです。

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