2026.10.27

来年に向けて優先すべき改革 ― 新しい制度の前に、判断の理由を整理する

来年に向けて優先すべき改革 ― 新しい制度の前に、判断の理由を整理する

来年の改革を増やしても、社長への確認が減るとは限りません。先に整えるべきものが、別にあるからです。

ある社長が、来年の計画を考える中で、「人事評価制度の見直し」「社内外研修の強化」「社内マニュアルの全面改訂」を、中心の課題に挙げていました。

来年に向けて、どの改革を、どんな順番で進めるとよいのか。この1ヶ月書いてきた内容を整理しながら、具体的に説明します。

最初に取り組むのは「判断の理由」の整理から

来年の改革で、最初に取り組むとよいのは、新しい制度ではなく、社長の判断の理由を整理することです。

例えば、「値引きは5%まで」は、判断の基準です。

しかし、これだけでは、どんな場面で5%まで値引くのかが、社員には分かりません。分からないから、確認が生じます。そこで、基準の後ろに、「なぜなら〜」という理由を付け加えます。

新しい制度は、その理由を土台につくるほうが、日々の仕事の中で使われやすくなります。社員が、納得したうえで動けるからです。

なぜ制度を整えても確認が減らないのか

評価制度を整えたり、研修を増やしたりしても、社員が日々の仕事で判断に迷う場面は、なくなりません。

迷った社員は、結局、社長のところへ確認に来ます。確認に対応するたびに、社長は自分の時間を使うことになり、本来ほかの仕事に使えたはずの時間が減っていきます。

制度が決めるのは、「何を評価するか」「何を学ぶか」です。

しかし、日々の場面で「どう判断するか」には、答えてくれません。「この場面で、なぜそう判断するのか」という理由は、制度には書かれていないからです。理由が社長の頭の中にしかない限り、制度が増えても、社長への確認は減りにくいままです。

例えば、社外研修で、ビジネススキルやAI活用、次世代リーダーの考え方を学んだとします。

学んだ内容は役に立ちますが、自社の場面で、いつ、どう活用するのかは、社長の判断の理由が分からないと、社員は決められません。

よくある対策が効かない理由

よくある対策①

人事評価制度を新しく整え直す

なぜ効かないのか

人事評価制度は、「何を評価するか」を決めるものです。しかし、日々の仕事の中で「どう判断するか」までは決めていません。評価の項目が増えても、判断に迷う場面そのものは減りません。

よくある対策②

社内外研修の数を増やす

なぜ効かないのか

研修で渡せるのは、一般的な知識や考え方です。自社の社長が、どんな理由で判断しているのかは、研修では伝わりません。研修のあとも、自社の場面になると、社員は社長に確認に来ます。

よくある対策③

1on1を導入して、社員と話す時間を増やす

なぜ効かないのか

1on1は、社員と話す時間をつくる取り組みです。

しかし、社員が「これでいいですか」と聞き、社長が「それでいい」と答えるだけで終わると、いつもの確認を、1on1の時間にしているだけになります。「なぜそう判断するのか」という理由を話さなければ、社員は自分で判断できるようになりません。

実践整理 ― 優先順位の3ステップ

ステップ1 今年、繰り返された確認を棚卸しする

今年、社員から繰り返し受けた確認を、3つ書き出します。

「また同じことを聞かれた」と感じたものが対象です。長い文章も、カテゴリー分けも不要です。日々繰り返されている確認を、短い言葉で書くだけで構いません。

ステップ2 理由を一文で書く

3つのうち、最も多かった確認について、「なぜそう判断したのか」を一文で書きます。

この1ヶ月お伝えしてきた、「理由を一文添える」ことの続きです。

例えば、「値引きは5%まで。なぜなら、対等な関係を今後も続けていきたいから。」といった具合です。

ステップ3 来年の計画の最初に置く

その一文を、来年の計画の最初に入れます。

人事評価制度や社内外研修の見直しは、そのあとに進めます。先に土台を固めておけば、制度や研修を、自社の判断の理由に沿って設計できるからです。

比較表―制度を先に整える/判断の理由を先に整える

 制度を先に整える判断の理由を先に整える
最初にやること評価制度・研修の見直し繰り返される確認の理由を一文で書く
社員の動き新しい制度のもとでも確認に来る理由を基に自分で判断する
社長の負担確認の度に答える例外的な場面だけ答える
1年後制度は増えたが、確認の数は減らない確認の種類が少しずつ減っていく

繰り返される確認の理由を一文にまとめる作業は、評価制度や研修と比べて、地味に見えるかもしれません。

しかし、判断の理由を少しずつ増やし、更新し続けていけば、社長への確認は徐々に減り、社長の負担も軽くなります。その分の時間を、ほかの生産的な仕事に使えるようになります。

ミニワーク

問い1

今年、社員から繰り返し受けた確認を、3つ挙げられるでしょうか。簡単なメモ書きで構いません。

問い2

そのうちの1つについて、判断の理由を一文で書くとしたら、どう書きますか。短い一文で構いません。

問い3

その一文を、来年の年初に、誰にどう伝えますか。年末に立てた計画を、年初の早い時期に実行に移すことをおすすめします。

まとめ ― 来年の最初の一歩は、一文の理由から

来年の改革は、新しい制度を足すことから始めなくて構いません。繰り返される確認の理由を、一文で整理するところから始められます。その一文が、社員が自ら判断する組織の土台になります。

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